SSDの寿命は気にしなくていい?SSDを長持ちさせるポイントも解説

ゲーミングPCは高価な買い物なので、できるだけ長く使いたいですよね。

SSDは書き込み回数に限界があると聞くけど、SSDの寿命は気にしなくていいの?
といったSSDの寿命に関して疑問を持たれている方もいらっしゃるかと思います。

SNSでも様々な情報が飛び交っていて、どれが本当なのか迷ってしまいますよね…

本記事では、現役エンジニアの筆者がSSDの寿命に関する疑問に答えつつ、SSDを長持ちさせるポイントについても解説します。

※本記事ではサーバー用途ではなくゲームや事務作業などの一般的なPC利用を想定して解説しています。

目次

書き込み回数に限界があるSSD、寿命は気にしなくていいのか

適切な使い方をすればSSDの寿命はほぼ気にしなくていい

結論から言うと、「適切な使い方をすればSSDの寿命はほぼ気にしなくていい」ということになります。
以下、理由を詳しく解説していきます。

理由は、SSDに過度な負担をかけず適切に使用することで、TBW(総書込み容量)に達するまでの時間を大幅に延ばすことができる(寿命を気にしなくて済むレベルになる)ためです。

TBWとは

SSDのスペックを調べる際に「総書込み容量:1100 TBW 」のような記載を見かけるかと思いますが、そもそも「TBW」って何だろう?と思ったことはありませんか?

一般家庭での使用を前提に、メーカーはSSDの寿命を示す指標としてTBW(TeraBytes Written)を設定しています。

TBWの説明

TBWとは、SSDに搭載されているNANDフラッシュメモリに書き込むことができるデータ量の目安です。

※CPUなどホスト側からの書き込みによる寿命消費を表しており、SSD内部で行われるバックグラウンド処理による書き込みは含まれない

SSDの書き込み量による寿命の図
CPUからの書き込み
TBW
SSDの書き込み処理には色々あるイメージ。例:CPUからの書き込みTBW

※耐久試験のルールはJEDECという半導体技術協会が規定している(例:40℃で1日8時間動作、30℃で1年間データ保持 など)

※メーカー側でJEDECの規定に準拠した耐久試験を行いTBWが設定される

例えば、Amazonで人気のこちらのSSDであれば、TBWは1100 TBです。

これは毎日20 GBのデータを書き込んだとしても、約150年分に相当します。一般家庭での使用では、日々の書き込み量はこれよりもはるかに少ないため、TBWによる寿命の制限を気にする必要はほとんどありません。

ただし、TBWはあくまで寿命を推定するための一つの要素であり、他にもSSDの寿命に影響を与える要因が存在します。そのため、SSDを長持ちさせるためには、寿命をできるだけ消費しない使い方を心がけることが重要です。

SSDを長持ちさせる使い方(寿命消費を緩やかにする方法)

SSDの寿命を最大限に延ばすためには、以下のように適切な使い方を心がけることが大切です。

  1. 容量に十分余裕をもって使う
  2. 動作温度は室温程度に保ち、激しい温度変化を避ける
  3. 電源供給を安定させる

それぞれ詳しく解説していきます。

①容量に十分余裕をもって使う

まず、SSDを長持ちさせるためには、容量に十分余裕を持たせて使用することが重要です。

これは、SSD内部で行われるガーベッジコレクションやウェアレベリングという機能が効果的に働くために、空き容量が多いほど有利になるからです。

具体的には、SSDの容量の半分程度を常に空けておくことで、余裕を持った運用ができます。

TBW以外の寿命消費要素(例)

SSDの寿命を延ばすために搭載されている代表的な技術を2つご紹介します。どちらも、SSD内にあるフラッシュメモリセルの劣化を均一にし、SSDの寿命を延ばすための役割を果たしています。

  • ガベージコレクション(Garbage Collection)
    SSD上の不要なデータを自動で整理し、空き容量を確保してくれる機能。効率的な書き込みが可能になる。
  • ウェアレベリング(Wear Leveling)
    データの書き込みや削除が特定のメモリセルに偏らないようにするための技術。これにより、メモリセルが均等に使用され、特定のセルが過度に消耗することを防げる。
SSDの書き込み量による寿命の図
SSD内部の自動処理による書き込み
例)ガベージコレクション、ウェアレベリング
SSDの書き込み処理には色々あるイメージ。例:ガベージコレクション、ウェアレベリング

空き容量に余裕を持たせておくことでこれらの機能が効果的に働きます。

②動作温度は室温程度に保ち、激しい温度変化を避ける

次に、SSDの動作温度を室温程度に保ち、激しい温度変化を避けることも重要なポイントです。

理由は下記のとおりです。

フラッシュメモリセルの劣化防止

SSDは、NANDフラッシュメモリセルにデータを保存しているわけですが、このセルは一定の温度範囲で安定して動作するように設計されています。温度が高くなりすぎるとセルが劣化しやすくなり、逆に極端に低い温度でも、セルが適切に動作しなくなる可能性があります。

温度変化による不具合防止

NANDフラッシュメモリセルに使用されている酸化膜は温度の影響を受けるため急激な温度変化により不具合が起きる可能性があります。これにより、寿命の短縮や故障のリスクが高まります。

上記の通り、高温や急激な温度変化は、NANDフラッシュメモリのセルにストレスを与え、劣化を早める原因となります。

基本的な対策は、ファンによる冷却が機能するように少なくとも年に一度はPC内を清掃したり、通気性の良い置き方をすることです。また、冬はPCの近くに暖房器具を置かないようにしましょう。

放熱性を上げるためにSSDにヒートシンクを設置するのもありだと思います。

③電源供給を安定させる

電源供給の安定性を確保することも、SSDを長持ちさせるための重要な要素です。

突然の電源断や不安定な電源供給は、SSD内のデータを破損させたり、寿命に悪影響を与える可能性があります。そのため、必要電力の2倍を見積るなどして十分な容量の電源ユニットを使用することが有効です。

また、PCのシャットダウン操作を正しく行い、突然の電源オフを避けることも、SSDを保護するために必要な対策です。

SSDのデータ保持機能に寿命はある?

ここまでSSDの書き込み回数の観点で寿命について述べてきましたが、データ保持の観点での寿命についてはどうなのでしょうか?

一般的な環境では、SSDのデータ保持機能の寿命について過度に心配する必要はほとんどありません。以下のようなポイントを理解しておくと安心です。

  • 温度とデータ保持期間の関係
  • 現実的なリスクは低い
  • とはいえSSDよりもHDDの方がコールドストレージに向いている

以下、それぞれ詳しく解説していきます。

温度とデータ保持期間の関係

SSDのデータ保持期間は、非通電状態の温度と、通電状態の温度によって大きく影響を受けます。

これに関しては半導体技術協会のJEDECが公表した資料にSSDのデータ保持性能についてまとめられており、下記スライドが参考になります。

スライドはJEDECの資料より引用
一般ユーザーの使用ケースを想定した非通電状態(パワーオフ時)と、通電状態(アクティブ時)の条件を赤枠で囲った

一般ユーザー向けのSSDは、「通電中の温度が40℃、非通電時の温度が30℃の条件下でデータが1年以上保持されるよう設計すること」が規定されています。(画像赤枠部分)

この1年という期間は、下記のIntelの提供データに基づいて設定されています。

JEDECの資料より引用(Intelの提供データに基づいて作成された)
SSDが通電していない状態(パワーオフ時)での温度と、SSDが動作している状態(アクティブ時)の温度に基づいて、データが保持される期間(単位:週)を示した表

表の左は非通電状態の温度、表の下は通電時の温度を示しており、それぞれの環境におけるデータ保持期間が何週間かを示しています。非通電時は温度が高いほどデータ保持期間が短くなり、通電時は温度が高いほどデータ保持期間が長くなると言えます。

先述のJEDECが規定している「通電中の温度が40℃、非通電時の温度が30℃の条件下でデータが1年以上保持されること」というルールは緑の部分「52週間(約一年)」を基準にされているというわけです。

温度特性について補足

非通電時は温度が高いほどデータ保持期間が短くなる理由は、SSDに搭載されているNANDフラッシュメモリの浮遊ゲートと呼ばれる電子の保管場所から電子が逃げやすくなってしまうからです。

通電時に温度が高いほどデータ保持期間が長くなるのは半導体の伝導性が上がり電子の通り道である酸化膜への負荷が減るためです。ただ、高温環境では酸化膜(データ保持性能)以外に、他の半導体パーツ(例:コントローラ等)の不具合を心配すべきなので高温を避けた方がよいということは変わりません…。

現実的なリスクは低い

また、表のグレーで塗りつぶされているマスは、「通電時の温度 < 室温」のようなものなので一般的な使用では起こりにくい状況です。一般ユーザーはあまり考えなくて良いでしょう。

実際、家庭やオフィス内でSSDが55℃といった高温に晒されることは非常に稀です。PCに設置しないSSDは机の引き出しなどの比較的低温な場所で保管されるため、普通に使っていればデータが短期間で失われるリスクはほとんどありません。

メーカーが耐久試験を行う際は容量パンパンにデータを入れた状態で行われているわけですから、余裕を持たせて使えばこれよりもはるかに長持ちするはずです…!

とはいえSSDよりもHDDの方がコールドストレージに向いている

適切な使い方をしていれば長期保管の際にデータが消えるリスクも低いとはいえ、SSDはコールドストレージ(長期間のデータ保管)には最適ではないと言えますね。コストの面からも、長期間データを保管する目的であれば、HDDの方が適しています。

長期保管(コールドストレージ)の用途においてSSDのデータ保持性能が心配な人はHDDやクラウドストレージでバックアップを用意すると良いでしょう。

HDDは衝撃等による機械的な事故に弱いものの、SSDのような酸化膜劣化による電子漏れの心配がなく、SSDと比較して復旧も簡単、安価というメリットがあります。
データの読み書きの速度を気にしない用途であればHDDも十分使えますね!

まとめ

以上の内容をまとめておきます。

SSDの寿命は気にしなくていい?への回答は「適切な使い方をすればSSDの寿命はほぼ気にしなくていい」です。

適切な使い方
  • 容量に十分余裕をもって使う
    → 容量の半分以上の空けておけば安心
  • 動作温度は室温程度に保ち、激しい温度変化を避ける
    → 通気口を塞がない、年に一度はPC内を掃除する、近くに熱源を置かない
  • 電源供給を安定させる
    → 電源容量は余裕を持たせておく|PCを長時間使わないときはシャットダウンして突然の電源断リスクに備える

「通電しないとデータが消える」のは本当なのかについても述べました。まとめると以下のようになります。

データ保持期間について
  • 一般的な使用を想定して通電時40℃、非通電時30℃とすると52週間(約一年間)のデータ保持が保証されている
  • 上記のような適切な使い方をしていればもっと寿命は長いはずで、10年以上持つ可能性はある
  • コールドストレージ(長期保管用)として使うならコスト面も考えるとHDDの方がいいんじゃない?

本記事が参考になれば幸いです!内容が参考になったらぜひSNSで共有してください!!

パソコンでの作業効率を上げるにはマルチディスプレイがおすすめです。

記事をシェアする
  • URLをコピーしました!
目次